地域の葬送文化~「長寿銭」とはいったいどんなもの?
- 喪主
葬儀におけるマナーや常識、流れや考え方には、実は「地域差」があります。そのため、「ほかの地域の人にとってはまったく聞き慣れない単語だが、特定の地域の人にとってはとてもなじみ深い風習」もあります。これを知ることで、その地域の葬儀に参列したときの戸惑いを減らすことができます。
今回はそんな「特定地域の葬送文化」のなかから、「長寿銭」を取り上げます。
長寿銭とは関東でみられる習慣のうちのひとつ
「長寿銭」とは、関東地方の葬儀でみられる習慣のうちのひとつです。ただ、「関東地方」とは言っても、群馬県や埼玉県、また千葉県などでみられる風習なので、関東に住んでいる人でもこの「長寿銭」を見たことのない人もいるでしょう。
長寿銭とは、非常に特徴的な習慣です。
一般的な葬儀においては、
・不祝儀は参列者から出すものである
・不祝儀を入れる袋は、黒白もしくは双銀(ごく一部の地域においては黄白)の水引きがかけられており、その水引きは結び切りである
・不祝儀の金額は、関係性によって違いがあるが、3000円~である
という特徴があります。
しかし長寿銭は、まったく異なります。
長寿銭は、
・喪家側から出すものである
・長寿銭を入れる袋は、赤と白の蝶結び(出産祝いなどに用いられるもの)の水引がかけられた御祝儀袋である
・入れられる金額は、5円~100円程度である
といった特性を持っています。
長寿銭とは何のためにある?
「葬儀において、御祝儀袋に入ったお金が喪家側から配られること」に違和感を持つ人もいるかもしれません。しかしこれには、きちんとした意味があります。
長寿銭は、非常にご高齢の方が亡くなったときに包むものです。ここには、「故人のように長生きしますように」「参列してくださった方も、故人同様長生きができますように」「幸せな大往生でした」という意味が込められています。
「〇才以上ならば、長寿銭を用意する」という明確な決まりはありません。ただ、80歳を超えたあたりから長寿銭を包むご家庭が多くみられるようです。受け取った長寿銭はお守りのように持っておくのが良いとされていますが、神社などに寄付をしたり、また普段の買い物で使ったりしても構いません。
葬送儀礼のなかで赤白のお祝いの水引きを使う習慣は、長寿銭以外でも「百回忌の弔い上げ」などにも使われます。長く生きてきたこと、長く供養してきたことの締めくくりとして赤白の水引きを使うこともあると覚えておきましょう。
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