「香典」とは何か~その歴史と考え方について
葬儀に欠かせないものとして多くの人が持参していく「香典」。今回は、当たり前のようにみんなが持っていくこの「香典」の歴史と考え方について見ていきます。
香典の歴史は古くにまでさかのぼる
「香典」というものの始まりをさかのぼるのはそう簡単なことではありません。ただはるかな昔から、人間には、「花を死者に捧げる」「樒をお墓に置く」という風習がありました。香典の始まりをどこにとるかというのは諸説ありますが、このあたりが「香典」の原点であったとも考える説もあります。
現在のような「金銭での香典」は、室町時代の後期からとされています。ただ、この頃、金銭で香典をやりとりできるのは上流階級である武士だけの話でした。それ以外の人たちは、お金ではなく、食べ物などを持ち寄ったとされています。また、線香が一般化していくと、線香を持ち寄るようになりました。
お墓に花を置くやり方とは異なりますが、線香を捧げるということで、ここからが「香典」の始まりだとする説もあります。
なぜ線香が捧げられたのか~現在の香典事情
では、なぜ線香が捧げられるようになったのでしょうか。これにはいくつかの理由があります。
1.今と昔では線香のもちが違う
2.相互扶助の精神から
3.仏様は香を食べるから
4.悪霊よけ、獣よけ、臭い防止
現在は非常に長持ちする線香が出ていますが、かつては線香も質がよくなく、すぐに絶えてしまいました。このため、大勢の人がお香を持ち寄り、一晩中お香を炊き続けられるようにしたとされています。
加えて、貧しい人々の間では、葬儀を行うためにかかるお金を1つの家だけでまかなうのは難しかったとされています。このため、近隣の人が線香や食べ物を持ち寄り、それを助けたとされています。
「仏様はお香を食べる」というのは、今もある考え方です。四十九日が過ぎるまで、故人はお香を食べて過ごすとされています。そのため、故人の食べ物としてお香を捧げたとされています。
獣や悪霊がご遺体に近寄って来ることを避けなければなりませんでした。そのため、香りを出して、これらを遠ざけるべきと考えていました。また今ほどご遺体の保存技術がなかったため臭いが出やすく、これを防ぐためだったとも言われています。
現在は、1の理由で線香を持ち寄ることはなくなりました。4についても、「悪霊よけ」という考え方はあるにせよ、獣よけや臭い防止のために使われることはほとんどありません。また線香自体が安価であるため、家族の用意するお香だけで3も賄えるようになりました。現在香典をお渡しする理由は、ほとんど2の理由だけだといえます。
このため、線香自体を持ち寄ることはほとんどなくなり、現金に代えて持っていくようになったわけです。
参考:
http://www.cere-ikeda.com/14346175914709
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